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退職祝いは、長年の働きをねぎらい、新たな門出を送り出す贈りものです。気持ちがこもっていれば形は問わない、と言いたいところですが、贈る時期や品の選び方には、昔から受け継がれてきた約束ごとがあります。よかれと思って選んだ品が、実は失礼な意味を含んでいた、ということも起こりがちです。
とくに気をつけたいのが、贈るタイミングと、避けたほうがよい品です。退職祝いには「踏みつける」「手を切る」といった、別れや縁切りを連想させる品が思いのほか多く、知らずに選ぶと相手を戸惑わせてしまいます。また、相手が目上か同僚かによっても、ふさわしい贈り方は変わってきます。
このページでは、退職祝いを贈るときに押さえておきたいマナーと、避けたい品の理由を整理します。のし紙の作法は別のページにゆずり、ここでは時期・渡し方・品選び・相手への配慮を中心にまとめます。相手に気持ちよく受け取ってもらうための手がかりにしてください。
退職祝いは、いつ渡すかで印象が変わります。早すぎても気が早く感じられ、遅れると間が抜けてしまいます。ちょうどよい頃合いを押さえておきます。
退職祝いを渡すのは、最終出勤日の一、二日前から、送別会の席までが目安です。送別会があるなら、その場でみんなの前で手渡すのが、もっとも華やかで喜ばれます。送別会を開かない場合は、最終出勤の日に直接渡すか、難しければその週のうちに届けると、間延びしません。
退職の話が出てすぐに贈ると、急かしているように受け取られかねません。逆に、退職してしばらく経ってからでは、お祝いのきっかけを逃してしまいます。退職日が正式に決まってから動き出すのが、ちょうどよい流れです。郵送する場合も、退職日をまたいで遅れないよう、余裕をもって手配します。
手渡しするときは、相手が忙しくしている時間を避け、落ち着いて受け取れる頃合いを選びます。大きな品や荷物になるものは、持ち帰りの負担を考え、後日配送する形も検討します。直接会えない相手へは、品に短い手紙を添えて送ると、気持ちがより伝わります。職場で渡す場合は、まわりへの気づかいも忘れないようにします。
品に花束や色紙を添えるなら、当日の段取りも考えておきます。花束は持ち帰りやすい大きさにとどめ、生花が負担になりそうなら、枯れずに飾れるものを選ぶ手もあります。寄せ書きは、全員の言葉が集まるまで日数がかかるので、送別会から逆算して早めに回し始めると、当日に間に合わせやすくなります。品と花、言葉を一度に渡すと、受け取る側の印象にいっそう残ります。
退職祝いには、縁起のうえで避けたい品がいくつかあります。理由を知っておくと、うっかり選んでしまうのを防げます。
靴やスリッパ、玄関マットなど、足で踏んだり履いたりする品は、「あなたを踏み台にする」という意味に取られ、目上の方へ贈るのは失礼とされます。同じ理由で、足元に身につける靴下も避けるのが無難です。相手が同僚や後輩で、本人が欲しがっている場合は別ですが、上司や先輩へは選ばないようにします。
ハンカチは漢字で「手巾」と書き、「手切れ」に通じることから、別れを思わせるとして敬遠されます。傘も「差す」と「さようなら」の語呂や、開いて離れる形から、別れを連想させると言われます。刃物は「縁を切る」につながるため、これも慶事には向きません。
櫛は「苦」「死」の音を連想させ、縁起がよくないとされます。お茶は弔事の場で配られることが多く、お祝いにはそぐいません。肌着や靴下といった下着の類は、「生活に困っている人へ施す」という意味合いがあるため、退職祝いにはふさわしくないとされています。
時計や筆記具は、「これからも勤勉に」という励ましの意味を持つとされ、目上の方へ贈ると「もっと働け」と受け取られかねない、という見方があります。一方で、実用的で喜ばれる定番でもあり、餞別として好まれることも少なくありません。相手が気にする人かどうかを見極めて選ぶとよいでしょう。
同じ退職祝いでも、贈る相手によって気をつける点は変わります。間柄ごとの心づかいをまとめます。
目上の方へは、現金や商品券をそのまま贈るのは控えます。お金を直接渡すのは、生活を案じているように映り、失礼にあたるとされるためです。品物を選ぶか、職場でまとめて贈るのが無難です。前に触れた踏みつける品や、勤勉を促すと取られかねない品も避け、趣味やこれからの暮らしに沿った品を選ぶと喜ばれます。
気のおけない同僚や後輩へは、堅苦しく考えすぎる必要はありません。本人が欲しがっているものなら、靴や時計でも喜ばれます。ただし、別れを連想させる品だけは、お祝いの場にそぐわないので避けます。相手の負担にならない、気持ちの軽い贈りものを選ぶとちょうどよいでしょう。
長年勤め上げたご家族へは、形式にとらわれず、相手が本当に喜ぶものを選べます。第二の人生を彩る趣味の道具や、家族で過ごす時間を楽しめる品など、これからの暮らしを思い描いて選ぶとよいでしょう。タブーをあまり気にしすぎず、素直な気持ちを伝えるほうが、かえって喜ばれます。
結婚を機に退職される方へは、退職祝いというより結婚のお祝いとして贈るのが自然です。品選びも、新生活に役立つものや、二人で使えるものへと視点が移ります。退職への感謝は、お祝いの言葉やメッセージにそっと添えると、両方の気持ちが届きます。
Q. 送別会がない場合、いつ渡せばよいですか。
A. 送別会が開かれないときは、最終出勤の日に直接お渡しするのが自然です。当日が難しければ、その週のうちに届けると間延びしません。郵送するなら、退職日をまたいで遅れないよう、早めに手配します。タイミングを逃しても、遅れて贈るより、ひとこと詫びを添えて届けるほうが気持ちは伝わります。
Q. 本人が靴や時計を欲しがっています。贈ってもよいですか。
A. タブーとされる品でも、本人が望んでいるなら贈って構いません。マナーは相手を思いやるためのものなので、当人の希望が何より優先されます。ただし目上の方の場合は、本人の希望をはっきり確かめたうえで選ぶと、まわりから見ても誤解がなく安心です。
Q. 目上の人に現金や金券は本当に失礼ですか。
A. 目上の方へお金や金券をそのまま贈るのは、生活を援助するような響きになり、控えるのが無難とされます。どうしても実用的なものを贈りたいなら、品物の形にするか、職場の連名でまとめると角が立ちません。同僚や後輩、家族へなら、現金や金券でも問題は少ないものです。
Q. タブーの品をうっかり選んでしまいました。どうすればよいですか。
A. 気づいた時点で別の品に替えれば問題ありません。すでに渡してしまった場合も、相手が気にしていない様子なら、あえて触れずにおくのが穏やかです。マナーはあくまで気づかいの目安で、贈る側の温かい気持ちが伝わっていれば、品の意味で関係がこじれることはまずありません。
Q. 連名で贈るとき、品選びで気をつけることはありますか。
A. 大勢で贈るなら、まとまった予算で見栄えのする品を選べます。ただし、その中に別れや踏みつけを連想させる品が混じらないよう、代表者が確かめておくと安心です。贈る相手の立場に合わせ、目上の方なら現金や金券を避けるなど、全員で方針をそろえておくとよいでしょう。
退職祝いは、贈る時期と品選びの二つに気を配れば、失礼なく気持ちを届けられます。渡すのは、最終出勤の前後から送別会の席までが目安。退職日が決まってから動き出し、早すぎず遅すぎないよう手配します。送別会があれば、その場でみんなと一緒に手渡すのが、いちばん華やかです。
品を選ぶときは、踏みつける履物やマット、別れを思わせるハンカチや傘、苦や死を連想させる櫛、弔事につながるお茶など、縁起のうえで避けたいものに注意します。目上の方へは現金や金券、時計や筆記具も、受け取り方によっては失礼になりかねないので慎重に。ただし、本人が望む品なら、これらにこだわりすぎる必要はありません。相手や間柄に応じて、柔らかく考えるのがこつです。
しきたりは細かく見えますが、根っこにあるのは相手を思いやる心です。決まりを守ること自体が目的ではなく、長年の働きへの感謝と、これからを応援する気持ちが伝わることが何より大切です。贈る品を探すときは、退職祝いのテッパンギフト一覧もあわせて、相手の門出にふさわしい一品を選んでみてください。