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かんざしを贈るとき、最初に分かれるのは相手の髪型ではありません。それを挿す場面のほうです。留袖を着て結婚式に出る人と、ふだんのまとめ髪に使う人とでは、決め手の順番が入れ替わります。髪の量が効いてくるのは、そのあとです。
留袖の側には決まりがあります。素材と飾りの大きさで候補が先に減るので、似合うかどうかを考えるより手前で、選べるものが絞られます。
ふだん使いの側に、その決まりはありません。代わりに、髪の量に合う形かどうかが先に来ます。合わない形を渡すと、一度挿して落ちたところで引き出しに入ります。
かんざしとして売られているものには、軸を挿すものと、クシのように差し込むものがあります。この違いは、留まりやすさにも、慣れていない人が使えるかどうかにも効いてきます。
相手がどちらの場面で使うのか分からないこともあります。その場合でも、失敗しにくい側に寄せておく手は残っています。
かんざしとして売られているものには、黒留袖や色留袖に合わせるものとして並んでいるものがあります。結婚式で親として着る場面を想定した書き方で、パールと花、ゴールドやシルバーの組み合わせが目につきます。ただし、作法の側が勧めるものと、商品としてよく見かけるものは、そのまま重なりません。
格というのは、着物の改まり具合の順位です。留袖は既婚の女性がいちばん改まった場で着るもので、その上がありません。髪に載せるものが見劣りすると、着物のほうだけが立派に見えてしまう。素材が先に効くのはそのためです。
髪飾りは、留袖に必ず要るものではありません(ゆめや)。付けなくても格好はつきます。付けたくなるものでなければ、箱から出ないまま終わるということでもあります。
留袖に合わせる髪飾りには、べっ甲、黒漆、パールといった質のよい素材が挙げられています(きものレンタリエ)。
べっ甲は軽くて丈夫で、髪に挿したときにすべりにくいという性質もあります(銀座かなめ屋)。黒漆は漆を塗り重ねた黒い地で、光を強く返しません。黒留袖の黒と並んだときに落ち着きます。
パールは、和装の場でも、洋服で出る会でも収まります。式のあとに洋服へ着替える相手なら、付けたままでいられます。
留袖には、もともと着物に無かった装身具を付けないという考え方も残っています。イヤリングやネックレスは外し、指輪は結婚指輪だけ、とされています(着物ライフスタイル)。
かんざしは着物にもとからある髪飾りなので、この考え方の外にあります。同じパールでも、髪に挿すものと耳に付けるものでは扱いが違います。
つまり、かんざしとパールのイヤリングを組にして渡すと、片方だけが使われません。素材でそろえたつもりが、耳のほうは外されます。
付けるなら、飾りの少ない、軸が一本のものが勧められています(ゆめや)。よく見かけるものにはパールと花が組み合わさったものが多く、花が付いていること自体が外れるわけではありません。分かれるのは大きさです。
粒の小さいパールが主で、花が髪に沿って収まる大きさなら、留袖の側に置けます。花が広がって顔の横まで出るものは、振袖や訪問着の側です。
形でいえば、軸が一本で飾りの少ないものか、髪に沿って収まるクシ型が、この決まりとぶつかりません。ゴールドやシルバーと書かれているのは飾りの部分の色で、軸の材質はそれとは別に書かれています。
相手が留袖を着る予定を持っているかどうか、分からないこともあります。そのときはこの側の素材で選んでおくほうが確かです。改まった場に合うものは、飾りが髪に沿う大きさであれば、浴衣にもふだんの髪にも下ろせます。反対の向きには動きません。
浴衣やまとめ髪に使うものとして並んでいるものには、格の決まりがありません。マーブルやブラウンのように色の幅も広く、そのぶん手がかりが形のほうへ寄ります。
軸が一本のものは、お団子のようにまとめた髪に向きます。髪に巻きつけてから挿しても、先に団子を作ってから挿しても構わない、使い方の幅が広い形です(クラシル比較)。
幅が広いぶん、どこを通すかは使う人が決めることになります。決まった正解が無いので、慣れるまでは手が止まります。
足が二股に分かれたものは、夜会巻き(髪をねじって後ろでまとめる形)や、量のあるまとめ髪を留める側です。一本より安定して落ちにくいかわりに、髪が少ないと支えるものが足りません。
毛量の多い人には二股、少ない人やすっきり見せたい人には一本、という分け方が紹介されています(Vary)。贈る相手の髪をひと目思い出せるかどうかが、ここでの分かれ目になります。
かんざしとして売られているものには、クシ型のものや、かんざしとヘアピンとクシ型が組になったものもあります。差し込むだけで留まるので、挿してから倒すといった手順を知らなくても使えます。
軸を挿す形は、一本でも二股でも、まとめた髪のどこを通すかで留まり方が変わります。慣れるまでは何度かやり直すことになります。相手が和装の髪飾りを使ったことがあるか分からないなら、クシ型のほうが最初の一回でうまくいきます。
ショートやボブでも、首まわりの髪をひとまとめにして結び、その上から髪飾りを付けるという付け方があります(マリエフルリール)。長さそのものではなく、留める場所を作れるかどうかで決まります。
ただし、作れる土台が小さいぶん、通せる形は限られます。短い髪の相手に二股のものを渡すと、足が二本とも入る場所がありません。
髪の量も長さも読めないときは、クシ型か、軸が一本のものにしておくと間違いが小さくなります。
見た目が決まっても、髪から抜けてしまえば使われません。分けているのは、軸の表面と挿し方です。軸の表面は選ぶときに、挿し方は渡すときに手が打てます。
金属の軸は表面がつるつるしているので、髪がゆるんだり、後れ毛が落ちてきたりします。木の軸はざらつきがあるぶん髪が引っかかり、抜けにくくなります(nuitori)。
見た目で選ぶと、光を返す軸のほうが華やかに映ります。そこだけで決めると、着けた日に何度も挿し直すことになります。相手の髪が細い、あるいは量が少ないと分かっているなら、軸の質感を先に見ておくほうが確かです。
軸を挿す形は、一度挿して終わりではありません。まとめた髪に挿したあと、頭皮の側へ倒し、結んだ髪に絡ませてもう一度差し込むと固定されます(nuitori)。
受け取った人がこの手順を知らないままだと、「留まらないもの」という印象で終わります。「挿したら一度倒して、もう一回差し込むと落ちない」と伝えるだけで足ります。クシ型を選んだ場合は、この手順そのものが要りません。
髪の量が少ないときは、先にゴムで結び、そのゴムの隙間へ軸を通すと落ちにくくなります(Noire Neige)。髪そのもので支えるのではなく、ゴムを支えにする形です。
この使い方を知っている相手なら、髪が少なくても二股のものまで届きます。知らない相手には、毛量から選んだ軸一本でも、留まるまでに何度かかかります。そこが読めないなら、クシ型が逃げ道になります。
素材と、形と、軸の表面。この三つがそろって、次の日も使われます。見た目だけで選ぶと、一度着けたところで話が終わります。
洋服のまとめ髪でも使えます。クシ型なら差し込むだけなので、和装の作法を知らなくても困りません。髪をひとつにまとめて留める道具として見れば、着物かどうかは条件から外れます。
消えるのは、素材に掛かっていた格の縛りです。べっ甲や黒漆でなくても構わないので、色も柄も好みで選べます。マーブルやブラウンのように、和装では砕けて見えるものも、洋服の側では素直に収まります。
ただし、飾りの大きさは別の理由で残ります。和装に合わせて作られたものは花や飾りが大きく、洋服だとそこだけ強く出ます。髪に沿って収まる大きさのものを選ぶと、ふだんの服のほうへ下りてきます。
相手が着物を着ないと分かっているなら、決め手は形と軸の表面の二つになります。素材で迷う手間が一つ減るぶん、髪の量と質感のほうへ手をかけられます。
相手がその日に何を着るのか。そこから戻ってくると、かんざしは決まります。
留袖を着る予定があるなら、素材が先です。べっ甲、黒漆、パール。花が付いていること自体は構わず、分かれるのは大きさで、顔の横まで広がるものは振袖や訪問着の側へ回ります。
予定が無いなら、形が先になります。毛量の多い相手には二股、少ない相手には軸一本。ただしどちらも挿し方に慣れが要るので、「挿したら一度倒して、もう一回差し込む」の一言を添えられるかどうかで変わります。伝えにくい相手には、差し込むだけのクシ型が向きます。
予定そのものが分からないときは、素材を改まった側にしておくと後がききます。飾りが髪に沿う大きさなら、そのままふだんの髪へ下ろせます。
軸の表面は、どちらの相手でも最後に効きます。つるつるした軸では髪がゆるみ、ざらつきのある軸なら留まります。髪が細い人ほど、ここで結果が分かれます。
髪飾りは、着るものが決まってからのほうが選べます。
一本挿して落ちなかった、というところまで届けば、かんざしはその人の引き出しから出続けます。
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