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火にかけるやかんは、よほどのことがないと買い替える機会がありません。焦げても錆びても、まだ使えるうちは使い続けている家がほとんどです。台所に置きっぱなしになるものなので、色や形の気に入ったものが来ると、そこの景色が変わります。
選ぶときに最初に決まるのは、素材です。ホーローとステンレスでは、においの残り方も、扱い方も違います。
ホーローは、鉄などの金属の表面にガラスを焼き付けて作ったものです。中身が触れているのがガラスなので、においも色も残りません。麦茶を沸かした翌日に湯を沸かしても、麦茶の香りが付いてきません。
一つのやかんで、麦茶も湯も回したい家では、ここが効きます。色の付いたものを煮出す家ほど差が出ます。琺瑯、ほうろうと書かれているものも同じものです。
ガラスの膜で覆ってあるので、落としたりぶつけたりすると欠けます。欠けた下は鉄なので、そこから錆びが出ます。小さな傷でも同じことが起きるため、洗ったあとに水気を残さない扱いが要ります。
空焚きにも弱く、湯が無いまま火にかけると傷みます。火を止め忘れやすい家なら、音で知らせる作りのものにしておくと傷めずに済みます。金属だけのものより重いので、満たしたときに持ち上げられる大きさかどうかも、選ぶときに関わってきます。
ステンレスのものは錆びにくく、落としても欠けません。手荒に扱う台所や、子どもの手が届く場所では、こちらのほうが長く持ちます。軽いので、大きいものを選んでも人の手で扱えます。
かわりに、熱の伝わりが遅いので沸くまでに時間がかかります。新しいうちは金気のにおいが水に移ることがあり、何度か沸かすうちに落ち着きます。色や柄の並びはホーローほど多くありません。
同じ大きさでも、ホーローのほうが値段は上がります。ガラスを焼き付ける手間がかかるからです。色を何色も並べているものは、その色の数だけメーカーが作り分けています。
日本で作られたものは値が上がります。笛の鳴り方や蓋の合い方は、作りの細かさがそのまま出るところなので、値段の差はここにも表れます。
商品名の「2.5L」「4.0L」は、縁まで満たしたときの量です。吹きこぼれるので縁いっぱいには入れられず、実際に沸かせるのはその七割から八割ほどになります。満水1.5リットルなら1.0リットル、2.5リットルなら1.8リットル、4.0リットルなら3.1リットルが目安です。
つまり、3リットルの麦茶を一度に作りたい家には、満水4リットル前後のものが要ります。数字をそのまま人数に当てて選ぶと、思ったより少ししか沸きません。
湯だけなら、一人あたり0.5リットルほどが目安です。満水の表記でいうと、一人暮らしなら1リットルまで、二人なら1.5リットル、三人か四人の家なら2リットルから3リットルに収まります。この範囲なら、満たしても片手で持ち上げられます。
麦茶を作る家は、ここから一段上がります。夏に一日ぶんをまとめて沸かすなら、満水4リットル前後のものです。ここまで来ると、満たしたときは両手で持つことになります。使い道が湯だけなのか、麦茶も入るのかで、選ぶ大きさが変わります。
蓋の口が直径10センチほどあれば、大人の手とスポンジがそのまま入ります。麦茶を沸かす家では、底に茶渋が残るので、ここが効きます。「広口」と書かれているものは、この洗い方ができる作りです。
口が狭いものは、湯を沸かすだけなら困りません。ただし、麦茶パックを入れるときも取り出すときも、口の広さがそのまま扱いやすさになります。麦茶と書かれた商品が広口をうたっているのは、そのためです。
「笛吹き」と書かれたものは、注ぎ口に笛が入っています。沸いた蒸気が笛を通るときに鳴る仕組みで、蒸気機関車の警笛と同じです。台所を離れていても、沸いたことが音で分かります。
火を止め忘れて空焚きになるのが、やかんのいちばん多い傷み方です。とくにホーローは空焚きに弱いので、音で知らせてくれると助かります。台所に立ちっぱなしにならない家へ贈るなら、「笛吹き」と書かれたものを選べます。
笛が鳴るには、蒸気が笛のほうへ抜ける必要があります。蓋と本体のあいだから蒸気が漏れると、そのぶん音が小さくなります。作りの細かいものほど、少ない蒸気でしっかり鳴ります。
水を入れすぎても鳴りません。沸いた湯が笛の中へ入ってしまうためです。満水まで入れずに使うという話が、ここでもつながります。
赤ちゃんが寝ている家や、壁の薄い住まいでは、笛の音を困ると感じることもあります。夜に湯を沸かす習慣のある相手なら、音の出ないほうが静かに使えます。
笛の付いたものは、注ぐときに笛の蓋を開ける手間が一つ増えます。片手がふさがっているときには、その一手が面倒になります。誰がどんな時間に使うかで、笛のあるなしが分かれます。
役目が分かれます。電気のものは0.8リットルから1リットルほどで、一杯か二杯ぶんを早く沸かす道具です。火にかけるものは、そこから量が上がって、麦茶を3リットル作るような使い方になります。
夏に麦茶を沸かす家なら、電気のものがあっても足りません。逆に、一人で珈琲を淹れるだけの家に大きなものを渡すと、重くて使われません。相手が何を沸かしているかで、重なるかどうかが決まります。
湯を沸かすだけなら一人1リットルで足りますが、麺をゆでる湯や来客のぶんまで考えると、少し余裕のあるほうが使えます。一人で始めるなら満水1.5リットルまで、二人で始めるなら2リットルから2.5リットルが、持ち上げられる範囲に収まります。
麦茶を作るかどうかが分からないうちは、この辺りに収めておくと持て余しません。夏に麦茶を沸かすと決まってから、大きいものを足す家もあります。色の付いたものを選ぶなら、台所の他の道具と喧嘩しない色にしておくと収まります。
決めるのは、素材と、大きさと、笛の有無です。素材でにおいと扱い方が変わり、大きさで沸かせる量が決まり、笛で火の止め忘れが減ります。
一つのやかんで麦茶も湯も回す家には、ホーローのものを。においが移らないので、翌日そのまま湯を沸かせます。落として欠けると錆びるので、乱暴に扱う台所ならステンレスのほうが長持ちします。
麦茶を作る家には、満水4リットル前後を。書かれている数字は縁まで満たした量で、実際に沸かせるのは七割から八割ほどです。ホーローは重いので、この大きさになると満たしたときは両手になります。湯を沸かすだけなら、一人あたり0.5リットルで足ります。
麦茶を沸かす相手なら、蓋の口が10センチほどある広口のものが向きます。手とスポンジが入るので、底に残る茶渋まで届きます。台所を離れる時間の長い相手には、笛の付いたものを。夜に湯を沸かす相手には、逆に音の出ないものが静かです。
どちらも火を使わないので、コンロを一口ふさがずに済みます。
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