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馬刺しの赤身は、自分で買いに行く機会がほとんどないのに、出されれば箸が進むものです。近所の店に切り身が並んでいるわけでもなく、一人で食べるために取り寄せる人も多くありません。もらって初めて食卓に上がる種類の贈り物です。
そのかわり、渡せる相手が決まります。生の肉なので、食べない人には手が付きません。そこさえ越えられれば、次に分かれるのは赤身にするか、脂の入った霜降りにするかです。
馬肉の赤身は、脂がほとんど入っていない肉です。噛むと澄んだ甘みが出て、後味が軽く残ります。舌に脂が残らないので、続けて何切れも食べられます。
霜降りは逆で、赤身の中に脂が網の目のように入っています。舌の上で溶ける感じが出るかわりに、数切れで満足します。
この違いが、渡す量を決めます。赤身は主菜として食卓の真ん中に置けるぶん、一人が食べる量も増えます。人数ぶんを見込むなら、霜降りより多めに要ります。霜降りは一皿の主役として少量で足ります。
馬肉そのものが、牛や豚と比べて脂の少ない肉です。胃にもたれる感じが出にくいので、肉は食べたいが重いものは避けたいという相手に向きます。
商品名によく出るのが上赤身です。ただの「赤身」と並んでいるので、等級の差のように見えますが、元は部位の違いから来ています。
赤身には外モモが使われることが多く、上赤身は内モモのやわらかい部位が当てられます。内モモのほうが繊維がやわらかく、わずかに脂が入ることがあります。
やわらかさと甘みを取るなら上赤身、噛み応えを取るなら赤身。値段も上赤身のほうが上がります。改まった相手には、やわらかいほうが無難です。
産地の表記は二系統あります。熊本や会津といった国内の地名と、カナダ、ウルグアイ、ブラジルといった外国の名前です。
馬にも大きく育つ種と、小柄な種があります。熊本で育てられるのは大きくなる種で、一年半以上かけて肥やすため、脂が乗って味が濃く出ます。霜降りが多く取れるのもこちらです。
会津などで育てられるのは小柄な種で、やわらかく淡泊な肉になります。赤身が好まれてきたのはこの系統です。赤身を渡すなら、こちらが本筋になります。
カナダ産は、凍らせて解かしたあとの味が落ちにくいとされています。このジャンルはどれも冷凍で届くので、そこを通ったあとの安定は効いてきます。旨味はあっさりめで、値段も抑えられます。ウルグアイやブラジルといった南米のものも、値段の手ごろさで選ばれる側です。
一つ知っておくと表示の読み方が変わるのが、「熊本産」の中身です。純粋に熊本で生まれ育った馬は数が少なく、外から連れてきて熊本で一定期間育てたものも「熊本」として売られます。産地の表記だけで中身が決まるわけではありません。
馬刺しは生で食べる肉です。そのため、加工したあと中心まで凍らせることが決められています。48時間以上かけて凍らせる処置で、これを通ったものだけが生食用として店に並びます。
馬刺しは冷凍でしか届きません。冷蔵で送られてくることはありませんし、常温はもってのほかです。相手の冷凍庫に空きがあるかが、渡す前の条件になります。
小分けの真空パックが基本なのも、この事情から来ています。50gや100gごとに分けてあり、食べるぶんだけ解凍できます。1kgを渡しても、一度に開けるのは一袋です。
冷凍で届く肉なので、食べる前に解かす手順が挟まります。ここが、ほかの食べ物の贈り物と違うところです。
勧められているのは、真空パックのまま氷水に入れて、30分ほどかけて解かすやり方です。中心に芯が残る半解凍の状態で切ると、包丁が入りやすく、形も崩れません。
やってはいけないほうもはっきりしています。電子レンジ、冷蔵庫、室温での自然解凍は勧められていません。肉から水分が抜けて、食感も味も落ちます。衛生の面でも良くありません。
この一手間で、届いたものの味が決まります。上等な赤身を渡しても、常温に放り出されたら台無しです。
馬刺しを食べ慣れていない相手だと、冷蔵庫に移して待つという方法を取りがちです。冷凍のものを解かすなら冷蔵庫、というのが普通の感覚なので、無理もありません。
商品には解凍の説明が入っていることが多いのですが、箱を開けてすぐ冷凍庫へ入れると、その紙を読まないまま日が経ちます。
渡すときに「氷水で三十分」とだけ言えば足ります。細かい理屈は要りません。この一言が入るかどうかで結果が変わるという、珍しい贈り物です。
馬刺しには専用の醤油が使われます。普通の刺身醤油より甘みの強いものが合わせられ、小袋で付いてくる商品が多くあります。
これが付いていないと、受け取った側が自分で用意することになります。馬刺し用の醤油は、近所の店に置いていないこともあります。買いに出るところで、食べるまでの日がまた延びます。
渡す相手が初めて食べる人なら、タレ付きを選んでおくと、届いたその日に食べられます。食べ慣れている相手なら、好みの醤油を持っていることもあるので、無くても構いません。
このジャンルでいちばん大きい分かれ目は、味でも産地でもありません。相手が生の肉を食べるかどうかです。
生ものが苦手な人、火の通っていない肉を避ける人は一定数います。そういう相手に渡すと、冷凍庫に入ったまま動きません。菓子や調味料なら「好みではないが食べる」という逃げ道がありますが、生肉にはそれがありません。
相手が刺身や寿司を食べるかどうかは、一緒に食事をしたことがあれば分かります。馬刺しまで食べるかは、そこからもう一段先の話です。外食で頼んでいるところを見たことがあるか、話に出たことがあるか。思い当たらないなら、別のものに切り替えるほうが確実です。
生肉は、妊娠している人には避けられます。小さい子どもも同じで、加熱していない肉を食べさせない家庭がほとんどです。
家族の顔ぶれが分かっているなら、そこで判断が付きます。分からないまま送ると、家の中で食べられる人が限られます。
家族の人数が多い家でも、食べる人が一人だけなら、大きい量は要りません。量を決めるときは、家族の人数ではなく食べる人の数で数えます。
目安は、食卓での位置づけで変わります。小鉢に一品として添えるなら、一人40gほど。主菜として食べるなら、一人80gから100g。三人ほどで囲んで主菜にするなら、250gから300gという計算になります。
商品の側は130gから2kgまで幅があり、選べる内容量という売り方が多いので、この数字に合わせられます。
小分けになっているので、少し多めでも困らせません。50gや100gの袋が分かれていれば、一袋ずつ解かして食べられます。ただし冷凍庫の場所を取るので、多ければ多いほど良いというものでもありません。
小分けの真空パックなら置けますが、家庭の冷凍庫では一か月ほどが目安です。業務用の冷凍庫と違い、家庭のものは扉の開け閉めで温度が上下します。
置き場所にも向き不向きがあります。扉の開け閉めが少なく、温度の変わりにくい奥のほうが向きます。製氷室の近くや、頻繁に出し入れする段は避けたい場所です。
1kgを渡すということは、その相手の冷凍庫に一か月ぶんの場所を空けてもらうことでもあります。冷凍食品を常備している家、まとめ買いをする家だと、そこが埋まっていることがあります。
相手の暮らしぶりが読めないなら、200gから300gあたりにしておくと、置き場所で困らせません。三人ほどで一度に食べ切れる量なので、冷凍庫の隅で残り続けることもありません。
相手が生肉を食べるか。赤身か上赤身か。産地はどちらの系統か。量はどれくらいか。そして、解凍の仕方をどう伝えるか。馬刺しの赤身は、この五つを順に埋めていくと届ける一箱が決まります。
いちばん先に来るのは、相手の顔ぶれです。生ものが苦手な人、妊娠している人、小さい子どもには渡せません。ここが合わないと、味も産地も意味を持ちません。
赤身は脂がほとんど入っていないので、続けて何切れも食べられます。主菜として食卓の真ん中に置けるかわりに、人数ぶんを見込むと霜降りより多めに要ります。数切れで満足する霜降りとは、量の読み方が逆になります。
「上赤身」は内モモのやわらかい部位が当てられた呼び方で、値段も一段上がります。等級ではなく部位の話なので、箱に「上」と付いていたら、どこを使ったものかを見ておくと中身が読めます。
産地は熊本や会津といった国内の地名と、カナダや南米の名前に分かれます。赤身の本筋は、小柄な種を育ててきた会津の系統。ただし「熊本産」の中には、外から連れてきて熊本で育てたものも含まれます。
生食用なので、冷凍でしか届きません。相手の冷凍庫に場所が要りますし、氷水で三十分かけて半解凍にするところまでが味のうちです。
一人か二人で少しずつ楽しむ相手には、上赤身を小分けで100gから200g。三人ほどで食卓を囲む相手には、赤身を250gから300g。初めて馬刺しを渡す相手には、タレの付いたものを選んで「氷水で三十分」と添える。それだけで、冷凍庫から出てくるまでの道が付きます。
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