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酒のつまみは、自分ではいいものを買いません。袋のまま置ける乾き物で毎晩済ませている人ほど、一つ上のものが届くと、その日の一杯がそのまま変わります。
最初の分かれ目は、「イカ」という一語の下に、種類の名前と加工の名前が両方並んでいることです。スルメイカ、ヤリイカ、アオリイカ。するめ、さきいか、一夜干し。どちらの言葉で選んでいるのかで、届くものがまるで変わります。
もう一つ、数え方が状態で変わること。杯、匹、枚。どれで数えられているかによって、同じ数字でも届くものが変わります。
イカは大きく二つに分かれます。ツツイカと、コウイカです。
ツツイカは細長い体をしています。スルメイカ、ヤリイカ、ケンサキイカ、アオリイカがここに入ります。コウイカは、背中に固い板のような甲を持っていて、胴が太い楕円形です。商品名に「甲イカ」「コウイカ」と出るのがこちらです。
味の目当てになるのは、そのうちの二つです。アオリイカは甘みと旨みがきわめて強く、ねっとりとした食感。旬は夏から秋で、土地によってずれます。ケンサキイカは身に厚みがあって、上品な味わい。産地は島根、山口、長崎あたりで、旬は3月から9月ごろです。このあたりは高級なほうとして扱われます。
スルメイカは「真イカ」とも書かれます。同じものが二通りの名前で並ぶので、別の種類だと思って両方を選んでしまうことがあります。
イカの数え方は、基本が「杯」です。「7ハイ」「3〜5杯入り」と書かれているのは、この数え方です。
ただし、生きているものは「匹」、干物になると「枚」に変わります。「3〜5枚入り」とあれば、それは乾かしたものです。杯なら食材として、匹なら生き物として、枚なら加工品として数えている、という分かれ方です。
同じ「3〜5」という数字でも、杯と枚では届くものが違う。先に効くのは、数字ではなく単位のほうです。
するめとあたりめは、同じものです。名前だけが違います。
「する」という言葉が、お金を無くすほうの意味に通じるので、縁起を担いで「当たり」に言い換えたのが「あたりめ」です。中身は変わりません。別のものだと思って選び比べても、中身は同じです。
さきいかは、これとは別のものです。するめは味をつけずに乾かしたものですが、さきいかは、生のイカやするめに味をつけてから、あぶって、乾かして、裂いたもの。あぶったあとに引き伸ばしてから裂くので、するめよりやわらかく仕上がります。
呼子という地名が、イカの贈り物ではよく出ます。佐賀の港です。
夜、漁火に寄ってきたイカを一本釣りで釣り上げ、生かしたまま港の生簀まで持ち帰る。この漁の形があるので、呼子のイカは生きたまま扱えます。
遠くへ送るぶんは、獲れたてのまま凍らせます。CAS凍結と書かれているのがそれで、磁場で細かく振動させながら、マイナス55度で一気に凍らせる方法です。獲れたての状態のまま送るための方法なので、「活き造り品質」という言い方が商品名に出てきます。
姿造りは、切ったあとで、イカ一杯の形にまとめ直した状態のものです。解かして皿に移せば、そのまま食卓の真ん中に置けます。
見た目が効くので、人の集まる日に渡すものです。一杯ぶんが一つの形になっているぶん、取り分ける人が要ります。逆に、一人で晩に少しずつ食べる相手には、量も見た目も余ります。
凍って届くので、受け取る日が決まっている相手向きです。
細造り。いかそうめん。表記は店によって揺れますが、細長く切ってある状態を指しています。
これも凍って届きます。解かして器に移すだけなので、台所に立たない相手にも渡せます。小分けになっているものなら、一人で食べる相手にも合います。
細く切ってあるものは、種類が書かれていないことがあります。アオリイカなのか、スルメイカなのか。種類の名前が無いと、味の見当が付けられません。
むき身は、皮をむいて内臓を抜いただけの状態です。切っていないので、そこから先は受け取った人の手になります。
刺身にも天ぷらにも回せるので、台所に立つ相手にはこちらのほうが自由です。ただしキロ単位の袋で売られることが多いので、一度に扱う量が大きくなります。
「1袋3〜5杯入り」のような書き方をされるのも、このむき身です。杯という数え方が分かっていないと、袋の中身が読めません。
生で贈るときに効くのは、種類の名前が書かれているかどうかです。
アオリイカなら甘みの強いほう、ケンサキイカなら身の厚いほう。そこが書かれていないものは、味の当てが付かないまま渡すことになります。
凍らせ方が書かれているものもあります。CAS凍結、急速凍結。産地から遠い相手に送るなら、そこが書いてあるほうが、届いたときの状態を読めます。
するめとあたりめは、味をつけずに乾かしただけのものです。そのぶん硬い。
噛むほうを楽しむ相手には、これが合います。酒を長く飲む人。裂きながら少しずつつまむ人。常温で置けて日持ちするので、渡す日を選びません。
ただし噛む力が落ちている相手には、そのままでは重い。年配の方へ贈るなら、するめは硬すぎることがあります。
さきいかは、あぶってから引き伸ばして裂いてあります。この引き伸ばす手が入っているぶん、するめよりやわらかく仕上がります。
味もついています。そのまま食べて味が決まっているので、噛む力が落ちてきた相手にも渡せます。
さきいかを燻製にしたものが「くんさき」です。香りが乗っているぶん、好き嫌いが出ます。相手の好みが読めないときは、燻製にしていないさきいかのほうが無難です。
ゲソは足のことです。イカは、胴とゲソが別々に並びます。
ゲソは胴より少し硬く、コリっとした食感になります。旨みが強く、食べ応えがあるぶん、噛む回数が増えます。
書き方で中身が変わります。「するめげそ」ならゲソだけ、「ゲソ付き」なら胴とゲソの両方です。噛みごたえを目当てにする相手にはゲソだけのもの、どちらの食感も渡したいなら「ゲソ付き」という分け方になります。
一夜干しは、一晩だけ干して水分を軽く抜いたものです。するめほどは乾かしていません。乾かし方が浅いぶん、噛み切りやすい。
そのかわり、焼く手が要ります。魚を焼く道具がない家には、渡しにくい。個包装になっているものなら、冷凍庫から出す量を相手が決められます。
日持ちはするめほど長くありません。冷凍で届くものが多いので、贈るときの扱いは、常温の乾き物とは別になります。
気にする人はいます。だから「あたりめ」という言い方が使われています。
ただし、商品名に「するめ」と「あたりめ」が併記されていることが多いので、言葉のほうを完全に避けるのは難しい。そこまで気になる相手なら、乾き物ではなく生のほうへ寄せるか、「あたりめ」を前に出している商品を選ぶか。そのどちらかになります。
夏から秋にかけては、旬に当たる種類があります。
ケンサキイカの旬は3月から9月ごろ、アオリイカの旬は夏から秋。この時期ならどちらも旬に入ります。ただし旬の時期は産地によってずれます。
旬に合わせたいなら、夏から秋。それ以外の時期は、乾き物のほうが季節を選びません。するめもさきいかも常温で置けるので、年末の慌ただしい時期でも、相手の受け取る日を気にせずに済みます。
イカという一語の下で、商品名の言葉が四つのことを別々に言っています。
一つめは種類の名前。細長いツツイカと、背に甲を持つコウイカに分かれます。甘みを目当てにするならアオリイカ、身の厚さならケンサキイカです。
二つめは数え方。杯と匹と枚が混ざって出てきます。同じ数字でも、単位が変われば届くものが変わります。
三つめは乾き物の呼び分け。するめとあたりめは同じもので、さきいかだけが別のものです。味をつけてあぶって、引き伸ばしてから裂くので、するめより噛み切りやすくなります。
四つめは産地。呼子のように、生かしたまま港へ運べる場所があり、そこから獲れたてで凍らせたものが届きます。
ここまでが名前の話で、ここから先は、届く形の話です。姿造りはイカの形に盛り付けてあり、細造りは切り終わっていて、むき身は切るところから相手に渡ります。乾き物のほうは、するめが硬く、さきいかがやわらかく、ゲソが硬めで、一夜干しは焼く手が要る。
人の集まる日に、家族で囲んでもらうなら、姿造りを。一人で晩に少しずつ楽しむ相手には、小分けになった細造りを。台所に立つ相手にはむき身、魚を焼くのが好きな相手には一夜干し。噛みごたえを好む酒飲みにはするめとゲソを、噛む力が落ちてきた相手には、味のついたさきいかを。
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