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果物を箱で買うことは、自分のためにはあまりありません。一玉ずつ選んで、その日に食べる分だけ持ち帰る。和梨も同じで、六玉や八玉がまとめて入った箱は、家で食べるために注文するものというより、どこかへ送るために選ぶものです。贈り物として届いたときには、相手の手元でも買い方そのものが変わります。
同じ和梨がすでに家にあっても、困ることはありません。日持ちのする果物なので、置き場所さえあれば先に食べるものと後に回すものに分かれるだけです。生ものではありますが、切らずに冷やしておけば二週間から一か月ほどもちます。
分かれ目は品種の名前です。幸水、豊水、あきづき、新甘泉と並んでいて、どれも同じ和梨として売られていますが、噛んだときの手ごたえが二つに分かれます。名前の後ろに付く「特秀」「赤秀」といった文字や、「光センサー」という言葉も、それぞれ違うものを指しています。読み方が分かると、値段の差がどこから来ているのかも見えてきます。
和梨は品種の名前で売られます。産地や等級と並んで、必ず幸水なのか豊水なのかが書いてあります。この名前は味の濃さの順番ではなく、噛んだときの手ごたえが二つに分かれる、その分かれ目を指しています。
幸水、新甘泉、あきづきは、噛むと音がする品種です。果肉に張りがあって、歯を入れたところで一度止まる感じがあります。冷やしてそのまま出したときに、いちばん違いが出るのがこちらです。
もう一方が豊水です。同じように果汁は多いのですが、噛んだあとが違います。口の中でほどけていくような、やわらかい当たりになります。二十世紀や南水も同じ側に入ります。
どちらが上ということはなく、好みが分かれるところです。歯ごたえのある果物が好きだと聞いているなら前者を、やわらかいものを好むと分かっているなら豊水を選ぶ。名前の通りがよいのは幸水と豊水の二つで、贈り状に品種を書いたときに相手が分かるのもこの二つです。
紛らわしいのがあきづきです。幸水と豊水を掛け合わせて生まれた品種で、名前の並びからは新しい第三の味を想像します。ところが食感は幸水の側に付きます。甘みは強いのですが、口当たりは音がするほうです。
新甘泉も名前だけでは読めません。鳥取で生まれた品種で、糖度の高さで知られています。こちらも噛んで音がします。
つまり、名前を見ただけでは食感が読めない品種があるということです。名前がよく出てくる四つのうち、ほどける側に入るのは豊水だけです。
一つの箱に複数の品種が入っているものもあります。幸水と豊水とあきづきが一緒に入った箱がその形で、この場合は音がするものとほどけるものの両方が入ります。
相手の好みを聞いていないときは、この形が向きます。どちらかに寄せて外すより、両方入れて選んでもらうほうが確実だからです。ただし一つの品種を味わってもらう形ではなくなるので、その品種を指名されている場合には合いません。
商品名に「光センサー」という言葉が入っている和梨があります。選果の場で光を当てて、割らずに中の糖度を読み取る装置のことです。読み取った数字がそのまま「糖度十三度以上」といった形で書かれます。
糖度を数字で書いているものは、その数字を下回らないという約束のもとに出しています。十三度以上と書いてあれば、測った結果が十三度に届いたものだけを箱に入れているということです。
書かれていないものが劣るわけではありません。測っていないか、測っていても表に出していないかのどちらかです。ただ、中身について書かれた数字があるのはこちら側だけなので、味の見当を先に付けたいときには手がかりになります。
もう一つ、商品名によく出てくるのが「秀」の付く文字です。特秀、赤秀、秀品といった書き方をします。青秀より赤秀、赤秀より特秀が上の並びで、値段もその順に上がります。
こちらは主に外側の話です。形が整っているか、色づきがよいか、傷がないか。同じ木から採れた実を並べて、見た目のよいものから上の等級に分けていきます。
つまり光センサーの数字と等級の文字は、測っているものが違います。前者は中身の甘さ、後者は外から見たときの姿です。特秀と書かれた和梨は箱を開けたときに揃って見えますが、それは甘さを保証した言葉ではありません。
商品名に等級と糖度の両方が入っているものもあります。糖度十三度以上を保証したうえで赤秀に分けた、という書き方です。この場合は外側と中身の両方に線が引かれているので、値段は上のほうになります。
贈り物として選ぶなら、箱を開けた瞬間を重く見るか、食べたときを重く見るかで決まります。改まった相手や、その場で開けてもらう場面なら等級の文字が効きます。家で食べてもらう相手なら、糖度の数字のほうが後に残ります。
和梨は木で熟してから採ります。採ったあとに甘みが増えることはないので、注文した時点の中身が、そのまま相手のところへ届きます。
追熟という言葉があります。バナナや洋梨のように、採ったあとに置いて食べごろにする果物のことです。和梨はこれに当てはまりません。常温に置いても糖度は上がらず、水分が抜けていくだけです。
「まだ青いから何日か置こう」という扱いは、和梨には効きません。青みが残る品種もあって、それは熟し方ではなく品種の性質です。届いた日が食べごろにいちばん近い日になります。
そのため、選ぶときにできることは注文の前に集まっています。品種を決め、糖度の数字を見るかどうかを決める。後から手を入れて味を上げる余地がないぶん、選んだ結果がそのまま出ます。
味が動かないと聞くと日持ちも短そうですが、和梨は逆です。丸ごとのまま冷やしておけば、二週間から一か月ほどもちます。
果物の贈り物では、着く日を食べる日の直前に合わせる必要があるものが多くあります。和梨はそこが緩いほうです。相手の予定を細かく聞き出さなくても、着いた日から先の幅で受け止めてもらえます。
早いほうがよいことに変わりはありません。ただ、何日かずれたところで、届いたときの味から大きく離れはしません。日にちを指定しにくい相手、たとえば留守がちだと分かっている家にも送りやすい果物です。
そのかわり、注文の側に日付が付いていることがあります。「八月下旬より順次発送」「八月十八日以降のお届け」といった書き方です。採れた順に出すもので、注文しても手元にすぐ届くわけではありません。
渡す日が決まっている場面では、この日付が先に効いてきます。発送が始まる日より前に渡したい場合は、その和梨では間に合いません。同じ品種でも、産地が違えば発送の始まる日も変わります。
日付にこだわりがなければ、この書き方は困りません。示されているのは採れる時季そのもので、その時季まで注文の側で待つというだけです。むしろ、いつ採れるかを先に決めて出しているぶん、着いた日と採れた日が近くなります。
幸水はこうすい、豊水はほうすい、新甘泉はしんかんせんと読みます。あきづきはそのままです。読みが分からなくても選ぶ側では困りませんが、贈り状に品種を書く場面では要ります。
見るところは読みではなく、豊水かそれ以外かという線です。豊水だけがやわらかくほどける側で、ほかの三つは噛むと音がする側に入ります。
色は品種の性質です。茶色い皮のものと、青みの残るものがあります。青いから未熟だという読み方は和梨には当てはまりません。
そのまま冷やして出して差し支えありません。置いて色が変わるのを待つ意味はない果物です。
別の果物です。洋梨は採ったあとに家で置いて食べごろにするもので、店に出た時点ではまだ硬いことがあります。和梨は木の上で待つ側なので、扱いが逆になります。
名前で分かれているので、和梨を探しているかぎり取り違えは起きません。ラ・フランスや洋なしと書かれていれば、そちらは置いて待つほうの果物です。
甘さの言葉ではありません。この文字を付けているのは選果する場のほうで、そこで決めた基準にどれだけ合っているかを表しています。
産地や組合が違えば、使う言葉や段の分け方も変わります。同じ「特秀」でも、どこの誰が付けた文字なのかで指しているものが少しずつ違うということです。値段の差の一部はここから来ています。
避ける必要はありません。数字は品種の代わりになる手がかりで、両方が要るものではないからです。
好みを聞いていて品種で決められるなら、数字は無くても選べます。好みが読めないまま一つの品種に絞って送るときには、数字があるほうが空振りしにくくなります。
品種によっては産地がほぼ決まっています。新甘泉は鳥取で生まれた品種なので、その名前で並ぶものは鳥取産が並びます。
一方で幸水や豊水は各地で作られていて、福島、静岡、長野といった産地が並びます。この場合、産地の違いは食感の違いにはなりません。品種を先に決めて、そのあとで産地を見る順になります。
和梨を選ぶときは、相手について何が分かっているかで、使える手がかりが変わります。
歯ごたえのある果物を好むと聞いているなら、幸水、あきづき、新甘泉のどれか。やわらかいものを好むと分かっているなら豊水。好みまでは聞いていないなら、一つに絞らずに複数の品種が入った箱にして、相手の側で選んでもらう形にします。
品種が決まったあとに残るのが、等級の文字と糖度の数字です。この二つは並べて比べるものではなく、どちらを頼りにするかを決めるものになります。改まった場で開けてもらうなら特秀や赤秀といった文字が効き、家でゆっくり食べてもらうなら光センサーで測った数字のほうが後に残ります。
どちらの決め方をしても、共通しているのは一つです。和梨は買った時点で味が決まっていて、届いてからは動きません。置いておけば甘くなるという待ち方ができないぶん、商品名に書かれている言葉が、そのまま相手の口の中に出ます。
夏から秋へ渡していく並びの、ちょうど真ん中に置ける果物です。
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