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もらった人が皿に広げて、集まった顔ぶれが手でつまんでいく。生ハムは、そういう時間ごと渡せる贈り物です。熟成させたかたまりを自分のために買う人はまずいないので、相手の家にあるものと重なりません。
最初に決まるのは、かたまりのまま渡すか、切ったものを渡すかです。かたまりは受け取った人が台に固定して削いでいく形なので、面白がる相手なら食卓の主役になりますが、そうでなければ箱のまま置かれます。切って包んであるものなら、開けて並べるだけで出せます。
値段の幅は大きく、手が届くものと高いものでは何倍も違います。その差を決めているものは、商品名に出ています。
スペインの生ハムは、二つの名前で売られています。ハモン・セラーノは白い豚のもも肉から作るもので、数が多く、値段もこなれています。ハモン・イベリコのほうは、イベリコ豚という黒い在来種から作ります。頭数が限られるので、同じ熟成の月数でもイベリコのほうが一段高くなります。
商品名に出ている「セラーノ」「イベリコ」は、産地でも店の名前でもなく、豚の品種を指した言葉です。イタリアで作られたものは、まとめてプロシュートと呼ばれます。
イベリコ豚には等級があって、餌と育て方で決まります。放牧されてどんぐりを食べたものがベジョータ。放牧はするけれど飼料も与えたものがセボ・デ・カンポ。小屋で飼料だけで育てたものがセボです。
ベジョータが一番上で、脂に甘い香りが出ます。商品名の末尾に等級が書かれていることが多いので、そこを見れば同じイベリコの中でどの等級かが分かります。食べ比べのセットには、等級の違うものを組んであるものもあります。
「熟成◯◯ヶ月」という形で、寝かせた期間が商品名にそのまま入ります。一年から一年半あたりが手に取りやすいところで、二年を超えると値段の上がり方が急になります。
寝かせているあいだに水分が抜けていくので、月数が長いものほど味が凝縮して、塩気も香りも強く出ます。長ければ喜ばれる、とはなりません。ふだんスーパーのパックを食べている相手に、いきなり三年近いものを渡すと、しょっぱいと言われることもあります。相手の慣れに合わせて選ぶほうが外しません。
丸ごと一本の形で売られているものは、豚のどちらの脚かで名前が分かれます。ハモンが後脚、パレタが前脚です。骨が付いた状態で、後脚は7キロから8キロ、前脚は4キロ前後。同じ産地の同じ熟成でも、前脚のほうが値段は下がります。
寝かせる期間の下限も違っていて、後脚は一年半から、前脚は一年から作られます。前脚はよく動かす脚なので肉が締まっていて、量は少なくても味は濃く出ます。どちらにしても、届いた日から食べきるまでに何ヶ月もかかる量です。原木にするかどうかは、人が集まる家か、腰を据えて向き合ってくれる相手かで決まります。
原木を小さくしたものもあります。骨を抜いて、筋肉のかたまりごとに切り分けたブロックで、400グラムから1キロくらい。マサ、コントラマサといった部位の名前が商品名に付きます。
こちらなら冷蔵庫に入りますし、二人暮らしの家でも持て余しません。それでいて、切り出す形はそのまま残ります。かたまりを削ぐ体験は渡したいけれど7キロは重すぎる、というときの落としどころです。台とナイフが付いたセットもあるので、道具のない家へはそれを選べば、届いたその日から切り出せます。
薄く切ってパックに詰めたものは、皿に広げればそれで食卓に出せます。100グラム前後の袋がいくつか入る形が多いので、一度に開ける量を相手の側で加減できます。台所に立たない人へ贈るなら、まずこの形です。
イベリコの食べ比べのように、種類の違うものを少しずつ詰めたセットもあります。かたまりが一つの味を長く楽しむものだとすれば、食べ比べのほうは何種類かを一度に並べて違いを見る形。同じジャンルの中でも、選ぶときに考えることがまるきり違ってきます。
日本で気軽に買える生ハムは、漬け込みから一ヶ月足らずで仕上げたものが中心です。ラックスハムと呼ばれるもので、しっとりやわらかく、塩気もおとなしめ。一方、スペインのハモンやイタリアのプロシュートのように長く寝かせたものは、一年から、長ければ三年、四年をかけます。
同じ「生ハム」の名前で並んでいても、この二つは口に入れたときの濃さがまるで違います。贈り物に選ばれているのは長く寝かせたほうなので、受け取った相手が思い浮かべている味とは違う、という前提で選ぶことになります。
ワインを日常的に飲む人や、旅先で本場のものを食べた人なら、二年三年のものが喜ばれます。そうでない相手には、一年から一年半あたりのものを。塩気の立ち方がおだやかで、そのままでもパンに乗せても収まります。
相手がどちら寄りか分からないときは、食べ比べのセットが安全です。等級や産地の違うものが少量ずつ入っているものなら、口に合うものが一つは見つかります。塩気の強い一種類を大量に渡すと、合わなかったときにそのまま残ることになります。
生ハムは冷蔵や冷凍で届くものが多く、包装やのしに応じていない店もあります。商品ページに「包装不可」と書かれていることがあるので、目上の方への贈り物や、内祝いのように形式が要る場面では、包めるかどうかを先に確かめておくと安心です。
親しい相手の家へ持って行く場面なら、箱の見た目は気にせず中身で選んで大丈夫です。その場で開けて、切り出すところまで一緒にやれるので、包装が要らないぶん、かたまりの側へ寄せやすくなります。
切って包んであるものは冷蔵や冷凍で届くので、受け取れる日を聞いておいたほうが確実です。骨付きの原木は事情が違って、20度前後の風通しのよい暗いところに置いておける品です。届いてすぐ手をつけなくても困らないので、帰りの遅い家にはむしろこちらが向きます。
生ハムは、農林水産省や食品安全委員会が妊娠中は避けるよう案内している食品に入っています。加熱していないナチュラルチーズやスモークサーモンと同じ扱いです。出産祝いや里帰りの手土産のように、贈る場面と重なりやすいジャンルなので、相手の状況が分かっているときは別のものを選んでおくと安心です。
決めることは三つあります。一つ目が豚の種類と熟成の月数、二つ目が渡す形、三つ目が相手の慣れです。
値段のほとんどは、白い豚のセラーノか黒いイベリコかと、寝かせた月数で決まっています。イベリコならさらに餌と育て方で等級が分かれ、ベジョータが一番上。月数は長いほど味が濃く、塩気も立ちます。
形は、かたまりか切ってあるかで割れます。骨付きの原木は後脚で7キロから8キロ、前脚なら4キロ前後。骨を抜いたミニ原木まで下りれば400グラムからで、冷蔵庫にも入ります。切って包んであるものは、開けて皿に広げればそれで済みます。
三つ目の相手の慣れは、いちばん見落とされるところです。長く寝かせたものは、スーパーのパックで食べ慣れている生ハムとは別の食べものになります。
年末年始に人の集まる家なら、骨付きの原木を台とナイフごと。その場で誰かが切る役を引き受ける楽しみも付いてきます。ふだんは二人という家には、骨を抜いたミニ原木を。相手の好みが読み切れないときは、等級や産地の違うものを少しずつ詰めた食べ比べのセットが、いちばん外しません。
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