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酒を飲む相手には、酒そのものより肴のほうが外れません。好みの銘柄を外す心配がありませんし、常温で置いておけるので、飲む日まで待っていてくれます。ジャーキーは、その置いておける側の肴です。
選ぶときに最初に見るのは、硬さです。水をどれだけ抜いてあるかで、歯が立たないほどのものから、指で裂けるほどやわらかいものまで幅があります。噛む時間が長いので、同じ重さの菓子より食べ終わるまでが長くなります。
ジャーキーは、味を付けた肉から水を抜いたものです。抜くほど身が締まって硬くなり、噛むのに時間がかかります。水を少し残したものは、指で裂けるほどやわらかく仕上がります。
商品名に「歯応えしっかり」と書いてあるなら、しっかり抜いたほうです。薄く切って軽く仕上げたものは、口の中でほどけます。同じ肉から作っても、水をどこまで抜くかでまったく別の食べものになります。
肉を乾かす工程と、煙をあてる工程は、もともと別のものです。乾かしただけのものもあれば、乾かしてから煙をあてたものもあります。煙をあてたものには、肉の味の上に香りが乗ります。
別の工程ではありますが、あて方は硬さにも響きます。高い温度で短くあてたものは表面が締まり、ぱさついた歯ざわりになります。低い温度で長くあてたものは、しっとりしたまま香りだけが入ります。「燻製」と書いてあっても、同じ食感にはなりません。
水が抜けているので、同じ重さの菓子と比べて、噛む回数がまるで違います。少しずつ口に入れて長く噛むことになるので、袋の中身が減りません。次々と手が伸びる食べものではありません。
袋に書かれた重さも、生の肉の重さとは別の数字です。水が抜けたあとの重さなので、数字だけを見ると少なく感じます。手のひらに乗る量でも、晩酌の一回分としては足ります。贈りものとして見た目が寂しいと感じるなら、袋の数を増やすほうが形になります。
小さい袋に分けて売られているのは、湿気るからです。一度に開ける量が小さければ、しける前に食べ終わります。一人で晩酌をする相手なら、小分けのものを何袋か。人が集まる場に持っていくなら、一袋の量が多いものが取りやすくなります。
牛でよく使われるのは、赤身のももです。脂が少なく、噛むほど肉のうま味が出てきます。ジャーキーと聞いて思い浮かぶ味は、たいていこれです。
牛タンを使ったものは、こりこりした歯ざわりが残ります。ばらを使ったものは脂があり、やわらかく仕上がります。すねは赤身のうま味が濃く出ます。同じ「ビーフジャーキー」でも、部位が違えば口に入れた瞬間から違います。
アメリカで育った牛は脂が多めで、オーストラリアやニュージーランドの牛は脂が少なく身が締まっています。国産の牛を使ったものもあります。
脂が多いほうがやわらかく、少ないほうが噛みごたえが出ます。硬さは水の抜き具合だけで決まるものではなく、元の肉にも左右されます。産地の表示も、硬さの手がかりになります。
産地は値段にも出ます。国産の牛を使ったものは高くなりますが、そのぶん贈りものとしての格が付きます。同じ重さで値段が倍ほど違うときは、たいてい肉そのものに理由があります。
鶏のむね肉を使ったものは、味があっさりしています。脂の重さが無いので、続けて食べても口に残りません。そのかわり脂が少ないぶん、噛みごたえは強く出ます。味が軽いことと、やわらかいことは別です。
豚を使ったものには、噛んだときに甘みが出るものがあります。牛の濃さが苦手な相手や、酒よりも茶と合わせる相手には、鶏や豚のほうが合うことがあります。牛だけが選択肢ではありません。
馬や鹿を使ったものもあります。どちらも脂が少ないので、噛みごたえは強く出ます。食べ慣れない相手には驚かれることもありますが、珍しいものを試したがる相手や、産地の名前で選ぶ相手には、話の付いてくる一品になります。
硬く仕上げたものは、噛む力が要ります。年配の相手や、歯の治療をしている相手には、そのまま渡せないことがあります。せっかく届いても、袋のまま置かれることになります。
その場合は、やわらかく仕上げたものか、薄く切ってあるものが向きます。「しっとり」「やわらか」と書かれているもの、細く裂けるように作られたもの。同じジャンルの中に、噛みやすい側の品がちゃんとあります。
水を抜くあいだに味を入れるので、味付けは濃く仕上がります。酒と合わせるならその濃さが利きますが、塩を控えている相手には渡しにくくなります。血圧の話をしている家なら、なおさらです。
塩を半分に落としたものも売られています。着色料や保存料を使わずに作ったものもあります。健康の話をしている相手に渡すなら、そうした表示のあるものにしておくと、気兼ねさせません。
小さい子のいる家も、渡しにくい相手です。味の濃さと硬さの両方が子ども向きではないので、家族で分けるものにはなりません。子どもがいると分かっている家に贈るなら、大人が一人で開ける前提の量にしておくか、ほかに家族で食べられるものを添えます。
人が集まる場に持っていくなら、何種類か入った詰め合わせが向きます。牛と鶏、乾かしたものと燻製にしたものが混ざっていると、その場で食べ比べになります。話の種にもなります。
家で一人の時間に食べてもらうなら、種類より量です。同じものが小分けで何袋か入っていれば、開けるたびに封の切れていないものが出てくるので、最後まで湿気ません。渡す相手が誰と食べるかで、選ぶ形が変わります。
渡せますが、形は選びます。珍味という言葉が付くと、酒の席の小さな肴という印象になります。改まった相手に一品だけ渡すなら、箱に入った詰め合わせのほうが格好が付きます。
肉の産地や作った店が書かれているものなら、値段の理由も見えます。袋のまま渡すのは、間柄ができている相手か、ほかの品に添えるときにします。
平気です。水を抜いてあるので、常温のまま運べます。冷凍や冷蔵の品と違って、相手が受け取れる日を決めておく必要もありません。
ただし、開けたあとは空気中の水を吸います。夏に贈るなら、小分けになっているものにしておくと、一袋ずつ食べ切ってもらえます。大きい袋のものは、人が集まる日に合わせて渡すほうが向きます。
決め手は、硬さと、何の肉かと、誰と食べるかの三つです。硬さは、水の抜き具合と、煙のあて方と、元の肉の脂の量で決まります。噛む時間が長い食べものなので、量は控えめでも足ります。
晩酌を楽しみにしている相手なら、赤身のももを使った牛のものを、小分けの袋で。歯に不安のある相手には、水を残して作った側のものを。塩を控えている相手には、塩分を落としたものを。
人が集まる家へ持っていくなら、乾かしたものと燻製にしたものが混ざった詰め合わせが場を持たせます。牛だけで揃えず、鶏や豚を混ぜておくと、最後まで飽きません。
噛む肴ではなく皿に盛る肴を探しているなら、いま挙げた三つのほうが場に合います。
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