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ネクタイは顔のすぐ下にあって、勤めに出た日はまわりの目に入り続けます。自分では選ばない一本が増えるのは、もらった側にはけっこう嬉しいものです。引き出しの中で場所も取りません。
選ぶときにまず分かれるのは、毎日締める相手か、式や式典のときだけ締める相手かです。毎日の相手には合わせやすい柄が要りますが、年に数回の相手なら、その数回で恥をかかない格のほうが先に立ちます。
そのうえで一本を決めるのが、幅と、柄の出し方と、生地の三つ。どれも写真では気づきにくいところですが、商品ページの数字と表記から読み取れます。
ネクタイの寸法で見るところは、先の太いほうの幅です。6センチから7センチのものはナロータイと呼ばれ、7.5センチから8.5センチが標準とされています。細いものは今風に見えますが、その代わり相手のスーツの襟が太いと釣り合いません。
合わせる相手はスーツの襟です。襟の幅と近い幅を選ぶと釣り合うとされていて、いまのスーツは襟幅8センチのものが一般的です。8センチ前後を選んでおけば、相手のスーツを見ていなくても大きくは外れません。太めが好きな相手なら、英国のものへ寄せる手もあります。英国のスーツは襟も太いので、ネクタイの大剣幅も8.5から9センチと太めに作られています。
同じ縞模様でも、出し方が二通りあります。糸を織り分けて柄にしたものは、表面にわずかな凹凸ができ、光の向きによって柄が浮いたり沈んだりします。落ち着いて見えるのはこの織りのほうで、改まった場に強いのも織りです。
刷って柄にしたものは、色がはっきり出ます。織りでは作れない細かい絵柄や、大きく崩した図柄は、刷ったものの得意なところ。写真で見たときに色が鮮やかなら刷ったもの、地の目が見えていたら織ったものと、見分けはだいたい付きます。
商品名に並ぶ柄の呼び名は、そのまま使える場の広さにつながっています。無地(ソリッド)はどの場にも締めていけて、小さな模様を散らした小紋がそれに次ぎます。斜めの縞はレジメンタルと呼ばれ、勤め先では定番ですが、祝いの席と弔いの席では控えるものとされています。
格子(チェック)は柄が大きくなるほどくだけた見え方になります。相手の職場の様子まで分からないなら、無地か小紋。ここは冒険しないほうが、結局は締めてもらえます。
同じ「シルク100%」でも、1,000円ほどのものから数万円のものまであります。分かれ目は、表示ではなく糸の作りのほうです。高速の織機で大量に織るときは、節のある糸だと引っかかるので、表面をおおって均一な糸に整えます。ところが節を含んだ糸の表情こそがシルクらしさなので、そこを残して織った生地は手間がかかり、値段に出ます。
もうひとつが縫い方です。手で縫ったものは結び目がやわらかく落ち、締めたときの形が変わります。丹後で織った生地や、京都で縫ったものが値の張る売られ方をしているのは、この糸と手縫いの二つが理由です。
シルクの生地には「もんめ」という単位が付くことがあります。決まった大きさに切った生地の重さのことで、数字が大きいほど厚みが出て、値段も上がります。20もんめあたりまではやわらかく軽い締め心地、そこから22もんめを超えていくと、厚みと丈夫さのほうへ寄っていきます。
厚い生地は結び目が大きくなるので、シャツの襟元に余裕のない相手だと窮屈になります。数字が書かれていない商品も多く、その場合は写真の艶と値段のほうで見るしかありません。書いてあるときだけ使える物差し、という付き合い方で十分です。
出勤のたびに締める相手なら、手持ちのスーツとシャツに合うかどうかが最初に来ます。無地か、小さな模様の小紋なら、紺のスーツにも灰色のスーツにも収まります。色は相手が普段締めているものより一段落ち着いたあたりが無難で、鮮やかなものは相手が自分で買います。
毎日の相手には、汚れの話も付いてまわります。食事の席が多い仕事なら、洗えると書かれたものが役に立つ場面もあります。ただし洗えると書かれたものはネクタイ全体のごく一部なので、そこを最優先にすると柄の選択肢が急に狭くなります。
式や式典のときだけ締める相手には、柄の合わせやすさより、その一回で浮かないことが大事になります。織りで地模様の入った無地か、細かい小紋。この二つなら、結婚式にも、目上の人と会う席にも、そのまま締めていけます。
本数が要らない相手なので、一本に予算を寄せられるのも利点です。生地の作りが値段に出るジャンルなので、同じ予算をまとめて一本に使うと、締めたときの結び目の落ち方まで変わってきます。
これから毎日締める相手には、8センチ前後の標準幅を選んでおくと、スーツを買い替えても使い続けられます。相手が今どんな幅を締めているか分からないうちは、細いものは避けておくほうが安全です。
柄は紺や灰色の地に、細い縞か小紋。新しく買ったスーツはたいてい紺か灰色なので、その二色に合うものを選べば、初日から使ってもらえます。
すでに何本も持っている相手だと、柄物は重なるか、好みから外れるかのどちらかになりがちです。無地は何本あっても使い道があり、持っているものと同じ色でも困りません。織りで地模様の入ったものなら、無地でも単調には見えません。
それでも迷うなら、色を紺にしておくのが手堅いところです。紺は勤め先でも式の席でも締められて、渡した相手が「どこで使おう」と考えずに済みます。
節目に合わせて渡すなら、5,000円台から10,000円くらいに、生地の作りで選べるものが集まります。この金額まで来ると、産地や縫い方が商品ページに書かれるようになります。箱に入って届くものが多いので、そのまま手渡せる形にもなります。
ネクタイとベルトは、目上の相手にも贈ってよいものとされています。踏みつける形になる靴や靴下とは扱いが分かれるので、そこは気にしなくて大丈夫です。
これから毎日締める相手には、一本を良くするより、締められる日を増やすほうが役に立ちます。3,000円前後を二本、あるいは三本。同じ色の濃さでそろえておくと、どれを選んでも同じスーツに合います。
まとめて売られているものもありますが、中の柄の組み合わせを選べないことが多いのは頭に置いておきたいところ。一本ずつ選べるなら、無地を一本混ぜておくと使い道が広がります。
裏側に小さくイニシャルを入れられるものがあります。表からは見えない位置に入るので、勤め先で使ってもらう妨げにはなりません。贈った日付を入れる形も選べますが、こちらは締める場面を選ばせてしまうので、名前だけにとどめるほうが締めてもらえます。
仕上がりまでに日数がかかるのが名入れの難点です。式や送別の日が決まっているなら、その日から数えて何日前に頼めばよいかを、注文の前に見ておくことになります。
10,000円くらいから上は、生地そのものを買う買い方になります。丹後で織った生地や、京都で縫ったもの。産地と縫いの工程が商品ページに書かれていれば、そこにお金がかかっているという意味です。
この違いが出るのは、締めている時間ではなく、締めた一日を人に見られる場面のほうです。毎日締める相手より、年に数回の相手に向く選び方になります。
売られているものの多くは140センチから150センチほどで、身長165センチから175センチくらいの人を見て作られています。180センチを超える相手だと、この長さでは先が短く収まってしまうことがあります。その場合は160センチ以上のロングと書かれたものを選ぶことになります。
体格のいい相手や、結び目を大きく作る人も同じで、長めのほうが収まります。相手の身長がはっきり分からないなら、標準の長さで問題が出るのは180センチから上と覚えておけば、選ぶときに迷いません。
式や葬儀のときだけ引き出しから出す相手なら、贈って構いません。その場合は毎日向けの柄ではなく、無地の落ち着いた色を一本。使う場面が限られるぶん、長く残ります。
締める姿がまったく想像できない相手には、勤め先で使うものを贈りたいのだとしても、ネクタイ以外に回したほうが無理がありません。引き出しに入ったままになるものより、その人が今日使うものを選ぶほうが喜ばれます。
幅、柄の出し方、生地。この三つを順に決めると、一本に絞れます。
幅は8センチ前後の標準に置いておけば、相手のスーツを見ていなくても釣り合います。細いものは、相手が今どんな幅を締めているか分かっているときだけ。
柄は、糸で織ったものが落ち着いて見え、刷ったものは色がはっきり出ます。改まった席に持っていく相手なら織り、普段の勤めで気分の変わる一本を渡したいなら刷ったもの。斜めの縞は勤め先の定番ですが、祝いと弔いの席では外れます。
生地は、糸の作りと縫い方で値段が決まります。手で縫ったものは結び目がやわらかく落ちるので、年に数回しか締めない相手ほど、一本に寄せる意味があります。
毎日締める相手には、紺か灰色に合う無地か小紋を。勤め始める相手には、標準幅を3,000円ほどで二本か三本。年に数回の相手には、織りで地模様の入った無地を一本、手で縫ったものから選んでください。
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