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家に麺の買い置きがあると、帰りの遅くなった日の献立が一つ決まります。ただ、自分で買うときは決まった一袋に手が伸びます。値段と太さを覚えているのがその一袋だけで、隣に並んでいる知らない麺には手が出ません。人からもらってはじめて台所に入る麺、というものがあります。
買い置きなので、家にすでにあっても渡すものが重なりません。乾いた麺なら常温で長く置けますし、一袋あたりの量も食べきれる範囲です。台所に二袋あっても、順番に減っていくだけで困りません。
選ぶときに最初に決まるのは、相手に渡す麺を小麦のものにするかどうかです。この分野には、豆や玄米から作った、小麦をまったく使っていない麺も並んでいます。同じ「パスタ」の名前でも、口に入るものは別の食べ物になります。
原料を決め、届く状態を選び、最後に太さを合わせる。この順で進めば、渡す一つが決まります。
パスタの麺で見る場所は二つです。何から作られているかと、断面が何ミリか。食感も、合わせるソースも、この二つから出てきます。
パンや天ぷらに使う小麦とは別の、デュラム小麦を粗く挽いた粉をデュラムセモリナと呼びます。乾麺の原料はこれで、たんぱく質を多く含むため、ゆでてもコシが強く、形が崩れにくいのが持ち味です。
麺を細く長く伸ばしても切れないのは、この粉に含まれるたんぱく質が網のように絡んで、麺の骨組みになるからです。ゆで加減を少し過ぎても、いきなり崩れることがありません。
一方、生パスタは普通の小麦粉に水や卵を混ぜて作ります。同じ小麦でも粉が違うので、仕上がりはもちもちした食感になります。
豆・米・玄米・とうもろこしから作った、小麦をまったく使わない麺があります。「グルテンフリー」という言葉は、小麦のたんぱく質が入っていないと言っているだけです。何でできているかは、原材料の欄まで読まないと分かりません。
黄えんどう豆のような豆から作った麺は、植物性のたんぱく質が多く、糖質は小麦のパスタよりおよそ4割低くなります。食物繊維が小麦のパスタの4倍以上入っているものもあります。麺そのものに味があるので、和えるものが軽くても成り立ちます。
米から作った麺は、もちもちした食感で香りがほとんどありません。クリームソースや和風の味付けによく合います。玄米から作った麺は香ばしさが残り、粒のような歯ごたえが出ます。原料が違えば、同じ「小麦不使用」でも別の食べ物です。
こうした麺は、袋の中で折れていることがあります。骨組みになるたんぱく質の網が無いぶん、力がかかると折れるためです。細く作られたものほど、その傾向が出ます。
商品名にミリで書かれている数字は、麺の断面の太さです。1.6から1.7ミリはスパゲッティーニと呼ばれる太さで、オイルのソースからクリームまで幅広く受け止めます。迷ったときに選ぶ太さがここです。
1.4ミリ前後まで細くなると、軽い食感になり、ゆで時間も短くなります。にんにくと油だけのもの、明太子やしらすを和えるものといった、あっさりした食べ方に合います。
1.8ミリを超えると、もちっとした噛みごたえが出ます。肉の入った濃いソースや、具の多い食べ方を受け止められる太さです。相手が普段どんな味付けをするか分かっているなら、そこから太さを決められます。
同じパスタでも、乾いた麺・生の麺・冷凍のものでは、届いたあとの扱いがまるきり違います。相手がいつ食べるかを決められない贈り物では、ここが実際の分かれ目になります。
乾麺は水分を抜いてあるので、常温の棚に置けます。賞味期限も長いので、渡してすぐ食べてもらう必要がありません。相手の予定を気にせず送れるのが、乾麺のいちばんの利点です。
ただし、ゆでるための道具は相手の台所にある前提になります。ゆで時間は7分から9分ほどで、深めの鍋にたっぷりの湯を沸かし、ゆで上がったら湯を切ります。一人で暮らし始めたばかりの相手だと、その道具から揃えることになります。
生パスタは乾かしていないので、冷蔵か冷凍で届きます。長く置けないため、相手が受け取れる日を先に確かめておくところです。
そのかわり、ゆで時間は2分から3分と短くなります。乾麺の三分の一ほどの時間で、もちもちした食感の一皿が出ます。
平たいフェットチーネや、断面が楕円のリングイネのように、乾麺では作りにくい形が並ぶのも生の麺です。同じ店で何種類かから選べるようになっているものもあります。
冷凍のパスタは、ゆでた麺にソースを合わせたところまで仕上げてあります。相手がするのは温めることだけなので、台所に立つ時間の無い相手にも届きます。
味を何種類か選べるものがあり、一食ずつ分かれています。少しずつ食べられるので、一人で暮らしている相手にも余りません。
要るのは冷凍庫の空きです。何食かまとまると場所を取るので、そこだけは相手の家の事情に左右されます。受け取れずに持ち帰りになると溶けてしまうので、日を決めて送る形です。
原料と届く状態が分かったら、それを相手に合わせます。パスタは口に入るものなので、体の事情と台所の事情の両方が関わってきます。
小麦を避けている相手に渡すなら、商品名の「グルテンフリー」という言葉だけでは足りません。豆が食べられない人、米なら食べられる人と、避けている理由は人によって違うからです。
原材料の欄を開けば、黄えんどう豆なのか、玄米なのか、とうもろこしなのかが書かれています。何を避けているのかが分かっているなら、その一行で選べます。
分からないなら、本人に聞くのがいちばん確かです。聞ける間柄でないなら、この分野から選ぶこと自体を見送るという判断もできます。食べられないものが届くよりは、そのほうが収まります。
豆から作った麺は、糖質が小麦のパスタよりおよそ4割低くなります。本人がそこを気にしていて、探していると聞いているなら、この一点で選べます。
聞いていない相手に、こちらの判断で渡すのは避けるところです。体つきを見て選んだと受け取られると、贈り物として重くなります。話に出ていないなら、原料の面白さや産地から選ぶほうが自然です。
豆の麺には、四食から十六食まで食数の違うものが並びます。合うかどうかを試してもらうなら少ない食数、すでに気に入っていると分かっているなら多い食数、という選び方ができます。
乾麺を渡すと、湯を沸かしてゆでて、ソースを作るところまでが相手の仕事です。料理をしない相手だと、袋のまま棚に残ることがあります。
冷凍のものなら温めるだけ、生の麺ならゆで時間が短いので、その負担が下がります。帰りの遅い相手や、一人で暮らし始めたばかりの相手には、こちらのほうが実際に食べられます。
反対に、休みの日に台所に立つのが好きな相手なら、乾麺が合います。太さを選べて、ソースを自分で決められるぶん、渡した麺で何を作るかを考えるところから楽しめます。
ソースまで作られているのは冷凍のものだけなので、乾麺と生の麺は、相手の台所に何かある前提になります。とはいえ、困るかどうかは太さで変わります。
1.4ミリ前後の細い麺なら、にんにくと油と塩だけで一皿になります。どれも相手の家にたいてい置いてあるものなので、冷蔵庫が空の日でも成立します。逆に1.8ミリを超える太い麺は、肉や具を煮込んだ濃いソースを受け止める太さなので、それを作るつもりのある相手向きです。
ソースまで一緒に渡すつもりなら、麺を先に決めておけます。太さと原料が決まると、合うソースの方向も一緒に決まるからです。米から作った麺を選んだなら、クリームや和風の味付けのほうへ寄せられます。
原料、届く状態、太さ。この三つが決まれば、渡す一つに絞れます。
原料は、相手が小麦を食べるかどうかから決まります。食べる相手なら、ゆでてもコシの残るデュラムセモリナの乾麺か、卵と水で練った生の麺。小麦を避けている相手なら、豆・米・玄米のどれなのかを原材料の欄で確かめてからです。糖質の話を持ち出すのは、相手が先にそう言っていたときだけにしておけます。
届く状態は、相手の暮らしぶりに合わせます。いつ食べるか任せたいなら常温で置ける乾麺、受け取る日を決められるなら生の麺、台所に立つ時間が無い相手ならソースまで作られた冷凍のもの。冷凍を送るなら、冷凍庫の空きだけが相手の側の条件になります。
太さは、相手の味付けの好みに合わせます。分からなければ1.6ミリ前後です。オイルからクリームまで受け止める太さなので、相手がどんなソースを作っても外れません。
同じ乾いた麺でも、相手の台所に馴染む味付けが変わります。
小麦を避けている相手には、原材料まで確かめた豆の麺を、まずは少ない食数から。休みの日に台所に立つ相手には、太さを選べる乾麺を。帰りが遅くて火を使う気力の残らない相手には、温めるだけの冷凍のものを。棚に一袋あるだけで、相手が献立を考えなくていい日が一つ増えます。
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