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もち菓子は、土地の名前を背負ったものが多く残っています。福井の羽二重餅、箱根の湯もち、太宰府の梅ヶ枝餅。旅行や出張のついでに買う菓子なので、自分のために取り寄せる人はあまりいません。
もらえば、行っていない土地の菓子が家に届きます。名前は聞いたことがあっても食べたことがない、という相手にはそこが効きます。土地の名前が付いているので、渡すときに話も付いてきます。
選ぶときに最初に決まるのは、日持ちです。冷凍で届くもの、常温で数日のもの、月をまたいで置けるもの。相手がいつ食べるかが読めるかどうかで、選べる範囲が変わります。
同じ「もち」の名前でも、作り方は分かれています。そこが、届いてから何日おいしく食べられるかを決めます。
普段食べる餅は、もち米を蒸して搗いたものです。砂糖も水飴も入らないので、置いておくと水気が抜けて硬くなります。焼くか煮るかしないと食べられなくなるのは、このためです。
求肥は作り方が別です。もち米を粉にしたものに水と砂糖、水飴を加えて練り上げます。砂糖と水飴が水気を抱えたままにするので、時間がたっても柔らかいまま残ります。
福井の羽二重餅は、この求肥で作られた菓子です。薄くのばした形が絹織物に似ているのでこの名前が付きました。大福の皮も、いまは餅ではなく求肥で作られていることがほとんどです。柔らかいまま届くものは、たいてい求肥のほうだと思ってよいものです。
同じ「くず餅」という名前で、まったく別の菓子が二つあります。
関東のくず餅は、小麦のでんぷんを乳酸発酵させて作ります。和菓子の中で唯一の発酵食品と言われるもので、発酵に一年以上かける店もあります。色は白っぽく濁っていて、弾力があります。きな粉と黒蜜をかけて食べます。
関西の葛餅は、葛の粉に砂糖と水を加えて火にかけたものです。透き通っていて、口に入れるととろけます。同じくきな粉と黒蜜をかけますが、食べたときの手ごたえは別物です。
相手がどちらを食べ慣れているかは、住んでいる土地でおおよそ分かります。逆に、食べ慣れていないほうを渡すと、同じ名前で違う菓子が出てくる面白さがあります。
きな粉と蜜を使う菓子は、食べる直前にかける形で売られています。山梨の信玄餅のように、包みの中に餅と粉と蜜が別々に入っているものがあります。
埼玉の熊谷で作られる五家宝のように、粉が最初からまぶしてあるものもあります。棒状にしたおこしを芯にして、きな粉と水飴を混ぜた皮で巻き、外側にもきな粉を付けたものです。こちらは開けてそのまま食べられます。
粉が別に付くものは、食べるときに粉が舞います。皿と箸を出して座って食べる菓子なので、職場の机の上には持って行けません。家で食べるぶんには、粉をかけて蜜を回すところから子どもが面白がる菓子になります。
和菓子は水気の多いものほど早く、少ないものほど長く持ちます。もち菓子はこの幅がとくに広く、一日で食べきるものと数か月置けるものが同じ名前で並びます。
水気の多い生菓子は一日から二日。半生と呼ばれるものは三日から一週間ほど。乾いた干菓子になると一か月から三か月ほど持ちます。
もち菓子はこの全部にまたがります。搗きたての餅に近いものは生菓子の側、求肥で作って個包装にしたものは半生の側、五家宝のように乾いた芯を使うものは長く持つ側です。
湿気の多い夏は、どれも冬より短くなります。同じ商品でも夏と冬で日付が変わるので、暑い時期に渡すなら、そこも見ておけます。
冷凍で送られてくるものがあります。焼きたてや作りたてをそのまま凍らせているので、日を指定して送れますし、届いてすぐ食べなくても構いません。留守がちな相手にも渡せる形です。
凍った餅は硬くなっていますが、解凍のときに少し温めれば柔らかさが戻ります。食べる直前にひと手間かかるぶん、日の縛りがありません。
常温で届くものは、箱を開ければそのまま食べられます。当日に出荷すると書かれたものなら、注文してから届くまでも短く済みます。そのかわり、届いた日から数日で食べきる前提の菓子です。
羽二重餅のように薄い菓子は、ポストに入る厚みの箱で送れるものがあります。日中に家を空けている相手でも、再配達を頼まずに受け取れます。
そのかわり、箱の見栄えは抑えめになります。改まった贈り物として手渡すより、気軽に送るときの形です。
手渡すなら、厚みのある箱に入って包装まで済んだものです。手土産にも、仏前に供えるものにも、そのまま持って行けます。同じ菓子で箱の形が選べることもあるので、送るのか手渡すのかを先に決めておけます。
同じ菓子でも、一つずつ包まれているか、箱に並べてあるかで使い道が変わります。相手がどこで食べるかを思い浮かべると絞れます。
個包装のものは、めいめいが好きなときに食べられます。休憩の時間がばらばらな職場でも、机に置いておけます。手も汚れません。
きな粉や蜜が別に付くものは、この場面には向きません。皿と箸が要るので、家で食べる菓子になります。逆に家族で囲む場面なら、その手間ごと楽しめます。
一つの大きさも見ておけます。一口で終わる大きさなら仕事の合間につまめますし、大きいものは茶を淹れて座って食べる菓子になります。相手が座って食べる時間を持てるかどうかで、この違いが効いてきます。
お供えに使うなら、置いたままにできる日持ちが要ります。生菓子は数日で下げることになるので、半生か干菓子の側から選ぶことになります。
箱に入って包装まで済んだものなら、掛け紙を付けて渡せます。ポストに入る薄い箱のものは、この場面には向きません。
供えたあとは家族で分けます。一つずつ包まれていれば、切り分けずにそのまま人数分に配れます。
福井、箱根、太宰府、熊谷。もち菓子には土地の名前が付いているものが多く、店の前まで行かなくても取り寄せられます。
相手が行ったことのある土地なら、そこから話が始まります。行ったことのない土地なら、食べたことのない菓子として渡せます。どちらでも渡す理由が付くのが、この分野の強みです。
その土地の出身の相手には、なおさら効きます。子どものころに食べていたものが届くと、味だけでなく思い出のほうが先に立ちます。相手の生まれた土地を知っているなら、そこから探す手もあります。
作り方で分かれます。搗いた餅をそのまま使ったものは、噛み切るのに力が要り、飲み込むときにも気を使います。年配の相手や、噛む力の落ちてきた相手には、そこが引っかかります。
求肥で作られたものなら、事情が変わります。もち米の粉に砂糖と水飴を練り込んであるので、歯で押すとすっと切れます。羽二重餅のように薄くのばしたものなら、口の中でほどけていきます。同じ「もち」の名前でも、噛む力の要りようは別です。
もう一段やわらかいほうへ寄せるなら、関西の葛餅があります。葛の粉で作った透き通ったもので、口に入れるととろけます。同じ名前でも関東のくず餅は弾力があるので、噛む力を気にするならこちらではありません。冷たくして出せるので、夏に見舞う相手にも渡せます。
餅で作るか求肥で作るか、何日持つか、どの場面で食べてもらうか。この三つで、渡す一つに絞れます。
搗いた餅は砂糖も水飴も入らないので、置くと硬くなります。求肥はもち米の粉に砂糖と水飴を練り込むので、時間がたっても柔らかいまま。福井の羽二重餅はこの求肥の菓子で、歯の弱い相手にも渡せます。
くず餅は東と西で別物です。関東のものは小麦のでんぷんを乳酸発酵させた白いもの、関西の葛餅は葛の粉で作った透き通ったもの。相手の住む土地から、食べ慣れているほうの見当が付きます。
日持ちは水気の多さで決まります。生菓子で一日から二日、半生で三日から一週間、乾いたもので一か月から三か月。冷凍で届くものなら日を指定できて、留守がちな相手にも渡せます。ポストに入る薄い箱のものは、手渡しではなく送るときの形です。
きな粉や蜜が別に付くものは、皿と箸の要る菓子です。職場で配るなら一つずつ包まれたもの、家族で囲むならその手間ごと楽しめるものを選べます。
相手の生まれた土地が分かるなら、そこの銘菓を一つ。歯の弱くなった相手には、羽二重餅か、関西の葛餅を。職場へ配るなら、粉の付かない個包装のものを選べば、机の上でそのまま開けてもらえます。行ったことのない土地の菓子が届く、それ自体が渡す理由になります。
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